2018/09

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◆木村健一
◆1957年6月26日 宮城県涌谷町生まれ
◆公立はこだて未来大学大学院メディアデザイン領域 教授

「コンピュータ」を市民生活の中で生かしていくと、どんな事が興せるのかに関心を持っています。情報を集めてデザインすることによって、ある時は地場産品 というモノになったり、学校を開くことによって新しい学びの場ができたり、市民活動のネットワークが新しいタイプの文化施設になったり、一種の社会的な化学変化を起こすことができます。さまざまな出来事をコンピュータが生み出した道具を用いて「編集する」こと、「デザインする」ことで、新しい「ことがら」 を作り出す事を試みています。

現在は特に芸術分野の表現を、 経営的な側面でとらえ直し、新しい「価値」を生み出せないか、と考えています。一般的にはアートマネージメントと呼ばれる仕事になると思います。

東京芸術大学で彫刻を作っていたのですが、芸術分野の新人を積極的に紹介していた「ぴあ」という情報誌で、アーティストやデザイナーの活動を伝える記事を書く仕事につきました。芸術家に会って取材をし、原稿用紙にむかって鉛筆で書くという幸福な生活は、瞬く間にDTP(コンピュータによる編集・印刷システム)の普及で、文字(情報)がビットと化して、新しい価値(データベースやチケット発券システム)を生み出す仕事に変わっていきました。

アートマネージメントという言葉を意識し始めたのはこのころです。情報技術を用いて、アーティストやデザイナーを社会に「広報する」という一連のプロセスを具体的に体験できました。また、この頃、全国の自治体や民間が美術館や文化会館をたくさん計画するようになります。アーティストやデザイナーを養成する学校も数多く設立されるようになりました。

アーティストを見つけ出すという体験を原点に、デザイン学校でマルチメディアを研究する施設を作ったり、「情報デザイン学科」という名前の新設学科を作る仕事をしたりしました。このあたりから、コンピュータネットワーク上で出会った人たちと、ボランティアベースの様々なプロジェクトを経験します。特に気に入っているものは、三つあります。一つは100校プロジェクトに参加した葛尾中学校(福島県)との出会い、もう一つはせんだいメディアテークプロジェクト(伊東豊雄設計)との出会い、そして名取市文化会館(槇文彦設計)の広報支援プロジェクトとの出会いです。

葛尾村ではネットワーカーと中学校の先生達といっしょにインターネット環境を用いた「学びの場」のデザインを手伝いました。せんだいメディアテークではメディアをモチーフにした市民参加型イベントを開催して、数多くのメディアボランティアの人たちと遊ぶことができました。この流れの中で、研究室の学生さん達とアート系フリーマーケットを研究したり、アート情報を提供するwebサイトやフリーペーパーを作ることになります。名取市文化会館では、市内全戸に配布する広報誌の制作を行うボランティアグループを作ったり、ワークショップやコンサートの広報・宣材を制作するチームも作ることができました。住民のアートに関する興味を公共音楽ホールという触媒をきっかけに一種のメディアボランティアに組織できたのは面白い仕事だったと思います。

まず、現場に行ってみること。そして、そこにある資源を最大限に生かしネットワークとつなげることで、新しい価値を生み出す。そうした実践的なプロジェクトを通して研究を展開しています。「ディパック」に「寝袋とパーソナルコンピュータ」を詰め込んで、わくわくする環境だけれど、結構「つらい」ことをものともせず、「にこにこ」と楽しめる人といっしょに学びたいと考えています。